ハンディキャップのお話

はじめまして、シグネット 富川です。
永いヨット人生、今は最終レグ!志摩ヨットハーバーで、自分の間尺にあったヨットライフをマイペースに過ごしたいと願っていますが・・・たまに楽しませていただいている、VOCヨットレースのレーサー氏のご要望にお応えして、NORC~JSAF組織で計測に少し関わってきた因縁から、ヨットレースのレーティングやハンディキャップについて易しく解説をさせていただきたいと思います。
1.ヨットのハンディキャップ入門
一口にヨットレースといっても、レースの性格や参加者の意識によって千差万別であり、卓越した技術をもったプロのヨット乗りが、マシン化した道具を駆使して活躍する場もあれば、 とーちゃん、かーちゃんの二人で気軽に参加できるレースもあるし、経験を積んで、いっぱしの能書きをタレるヨット乗りのためのレースもある。
大小さまざまなボートが競走するとき、どのボートが一番うまくセイリングし、仲間から祝福されるべきなのか? 大きいボートが速いのはあたり前だから、所要時間だけでは決められず、ハンディキャップをつける必要がでてくる。
① ボートスピードを定量的に査定する模式に従い、格付け(レート)と、決め方(レーティングルール)、それを運用する計測システム (Measurement System of Rating Rule)
② レースをする場合、どのようにハンディを与え、成績を評価するか?判定するスコアリングシステム(方式)に区別して理解することが必要です。
一般に、これをひっくるめ、総称してレーティング・スコアリング・システムと呼ばれているようですね!
2.レーティング・システムについて
歴史的にレーティングルールは、ボートスピードを「艇速は艇長さの平方根に対応する!」という便宜的セオリーに基づいて、速さをレーティング長さとして査定するIORなど古典的なものから、現代テクノロジーを駆使して、コンピューターの中で推力要素と抗力要素を対応させて、色々な風向風速に対して、直接艇の速度対応を算出する、速度予測プログラム(VPP)に基づくIMS/ORCCシステムなど様々だが、ここでは、それを解説する枚挙余地が足りない! ただし、IMS/ORCCシステムの特質を知る好例として、拙艇『シグネット』(バンドフェツト30)の予測速度データから求めたポーラーダイアグラムを付図に示す。

3.ハンディキャップ方式(TOTとTOT)
ヨットレースのレーティング・スコアリング方式について、理論的部分の詳細まで理解する必要ないが、その概念だけでも感じ取ることが出来れば、よりレースが面白くなるはずだ!
先ずは、実践!即戦的!に入門として、ハンディを時間修正係数で成績を算定するため良く使われる、TOT方式とTOD方式を整理して理解しておきましょう!
【その1】 TOT (Time On Time)方式
所要時間に、夫々の時間修正係数を直接掛け合わせて、修正時間を算定する。電卓一発計算、使い方がシンプルなので、手軽に良く使われる方式!
CT = ET × TCF
修正時間 = 所要時間 × 修正係数
(Corrected Time = Elapsed Time×T.C.F.)
時間修正係数はTCF(Time Correction Factor)とか、TMF(Time Modification Factor)、TSF(Tokai Special Factor) など、ルールによっては、様々な呼ばれ方があるようですが、使い方は皆同じです!
厳密にいえば、ローカルではTCFと呼ぶのが相応しいと認識しています。
確認ですが・・・修正時間が一番小さな艇が優勝!ですよね?
【その2】TOD (Time On Distance)方式
ボートスピードはタイムアローアンスTA(Time Allowance)という数値で示される。これは、一海里を何秒で帆走できるか?即ち、スピードポテンシャル(Sec/Nm)を表現している。
例えば、TA=630 (単位はSec/Nm) とは、快風(4~6m)で一海里を630秒で走る!言い換えると、5.711ktで走れる艇だよ!という意味を持っている。
ここで、TAから艇速を算出した根拠解りますか? TAは速度を逆数秒で示すものなので、時速(Kt)に置き換えると、1時間=3600秒をTAで割ると艇速になるんですよね?
TOD方式の時間修正のスコアリングは、 CT = ET - ( Dist × TA )
修正時間=所要時間―(コース距離×TA)
ET: 所要時間(秒)
TA: タイムアローアンス(秒/Nm)
Dist: レースコース距離(Nm:浬)
本来、外洋レースで、海域の風速が不安定なケースでは、TOD方式を採用したほうが少し公平さが得られるはずですが、電卓一発計算で結果が直に出ないので、レースコミティには敬遠されているようですね!
4.TODとTOTって、どう?違うの?
一般に、 TCF=600/TA で設定されているので、関数として速度表現が違うだけ!だから、どちらも計算結果は同じになるはずです!ちょっと、比べてみると・・・
K艇: TA=630 TCF=600/630=0.9524 L艇: TA=700 TCF=600/700=0.8571
のハンディを持つ2艇が、レースコース36マイル、K艇は7時間(25200秒)、L艇は8時間(28800秒)でフィニッシュした!とする、すなわち、 K艇 : 25200×0.9524= 24000 : 25200-(630×36)= 2520
L艇 : 28800×0.8571= 24684 : 28800-(700×36)= 3600
何れもK艇大勝!めでたし!めでたし?
【 ところが、待てよ~?? 】
もし、レースの途中で無風!両艇とも止まってしまった・・・本当は、走っていないのに時間だけドンドン経過してゆく! TOT方式ではL艇にとっては、両艇とも止まって漂っている経過時間に対して、(昼寝していても?)630/700=90%!すなわち、10%も!ハンディキャップがもらえることになりますね!だから、よく微風レースでは小型艇有利!などと云われる根拠は、こんな所にあるかもしれませんね? これが、TOD方式では、所要時間から、ハンディ修正分を差し引いた残り時間を修正結果として比べるので、無風で止まっている部分が反映されるように、模式解釈できるので、理屈の上では少しは合理的に見えますね?
益々、こんがらかって、サッパリ解らん!解説の解説が要る!かもしれませんが・・・ 参考に!興味のあるひとは、実際のレース結果(下図: 11月の熊野灘レース)で確かめてみてくださいね!少し、お節介かもしれませんが? 表の右端にVOCでORCCレーティングを取得している艇のGPH、 即ちTAを参考に比較しておきました。

5.入門編のまとめ
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私たちが使っているVOCのレーティングは果たして正しく艇の性能を反映しているのか気になる所ではないでしょうか。膨大なORCCデーターベースと、JSAFのエリカカップのTSF、過去のNORC/CR95-98などを覗いて、VOC所属艇のORCC/GPHとの対応をにらんだ、実勢のレートは別表のように評価できると認識しています。 この正しいレーティングを基礎にして、スコアリング方式はクラブの独自性を加味することにより、楽しいクラブレースが運営できるようになると思います。
【 解説者の言い訳 ! 】 |
