那智 - はじめてのクルージング-
by ルナ・ロッサ 片山芳彦
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いつもクルージングに出て行く船、帰ってくる船を目にしては一度、泊りがけのクルージングをしてみたいものだと考えておりました。しかしながら、いつも計画倒れでなかなか実現できませんでした。というか、計画を立てる以前にどのような準備が必要か、皆目見当がつかず一歩踏み出せずにいたのが正直なところです。今回思いたったきかっけは、昨年度SYC会報のNo3に載っていた「クルージング天国」の記事でした。紀東であればわれわれでも無理なくクルージングが出来るのではないかと勇気づけられました。また、港に停泊しコックピットでくつろいでいれば若い女性との出会いがあるとの記事に妄想は膨らむばかりでした。 【計画】 1日目 五ヶ所 → 賀田 2日目 賀田 → 那智フィシャーナ 3日目 那智フィシャリーナ → 島勝 4日目 島勝 → 錦 5日目 錦 → 五ヶ所 5月1日 難行苦行。 いよいよ出航です。晴天との天気予報でしたが五ヶ所湾内でも白波の見える状況でした。メインセールをあげる段階でスライダーが引っかかって途中よりあげる事が出来ません。幸い予備のパーツがあったため即交換して事無きを得ましたがなんやら前途多難な様相を呈してきました。五ヶ所湾外へ出ると一転、無風となりましたので、天気予報の「沖で風強し」を信じてひたすら沖だしをしました。ところが、小一時間ほど機走したところで突然南風がはいり、いざセーリングと喜んだのもつかの間、強いうねりとしばしば入るブローで全員頭よりスプレーを浴びてしまい、最後にはヘルムが強くセーリング不可能な状態となりました。サバイバルモード突入です。そこでメインセールをおろすために、エンジンをかけ風位に立てようとした矢先にジブシートが流されペラに巻いてしまいました。レスキュー艇を呼ぼうかなどと言ってる間におりからの南風で錦周辺の岩礁帯へ流されているではありませんか。初日から座礁が現実味をおびてきました。極楽セーリングをしてあわよくばシュノーケリングでもしようとマスクとフィンは用意していたのですがこんな形での出番となりました。誰か立候補してくれないかなと周囲を見回しましたが気配は全くありません。仕方なく私が、ハーネスに命綱をつけて恐る恐るシートの切断、除去作業を行いました。機走できる状態となったときにはすでに賀田まで行く時間的余裕がなくなっていましたので、緊急避難的に島勝漁港へ入港しました。
島勝は五ヶ所と同じく天然の良港で入港前のうねり、風が全く無く別世界でした。潜水作業後着替える余裕もなく水着にずぶ濡れのTシャツといったいでたちで憔悴しきっていると、地元の人が声をかけてくれ、民宿のお風呂に入れるように交渉くれました。これは本当にありがたかったです。代金を払おうとするといらないとのこと、また帰りしなに大きな夏みかんを3つお土産として頂いてしまいました。一同、感謝感激、全く見知らぬ地でこのような親切を受けると、殺伐とした陰湿なニュースばかり耳にする昨今ですが、日本もまだ捨てたものではないとなにやら明るい気分になれました。ゴールデンウィークで漁が無かったらしく漁師のおじさんに許可を得て市場の前に係留させてもらいましたが、大きな製氷機が近くにあり早朝より氷を搬入する船がひっきりなしにやってくるので艇泊するのでしたら入ってすぐの左側の防波堤に槍付けするのが良いようです。この日はすでに2艇槍付けしていました。夜は船上BBQで一日の鬱憤を晴らしました。 5月2日、五里霧中。 7時には出航し一路那智を目指すも強いうねりばかりで風が全くありません。おまけにガスっていて陸地が全く見えません。またしてもセーリングできずGPS頼りの機走です。青天下極楽セーリングを期待していた全員意気消沈してしまいました。それでも新宮あたりから追い風が吹き出してきましたので、スピンを上げましたが間もなく風が前に回り、すぐさまスピン回収、クローズにて一路那智を目指しました。このレース中にも出来ないような機敏なセールチェンジが功を奏し、那智手前でやっと快適セーリングになるもすぐさま那智フィシャリーナ到着してしまいました。才藤さんは仕事の都合で残念ながら不完全燃焼のまま那智駅より帰路に着かれました。 那智フィシャリーナは一見入港は簡単そうに見えますが浅瀬、岩礁が入港経路近くにあり昨年何杯か座礁したとのことです。入港に際しては、港口にある一文字の西側のほうが水深があるのでヨットはこちらを通って出入りしたほうが無難なようです。また、寄港する場合は前日の夜までに管理事務所に連絡しておけばよいとのことです。今回は、入港1時間前に再度連絡しておいたところ管理事務所の清水さんが小船で迎えに来てくれ、水先案内してくれました。浮き桟橋に係留でき、漁船のひき波も無く満天の星空の下で快適な艇泊ができました。那智フィシャリーナから徒歩10分くらいのところにある那智駅の2階には町営の温泉施設「丹敷の湯」があります(利用料600円)。私たちはまずここで一服してから那智勝浦市街地へと繰り出しました。マグロのホルモン専門の店を探しましたが時間が遅かったせいか見つけられず、居酒屋へ入りました。ここでもマグロの胃袋、心臓、秋刀魚の塩辛などの珍味が味わえ十分に勝浦気分を楽しむ事は出来ました。 5月3日、一陽来復。 今日からは堤さんと私の初心者だけの航海です。久しぶりに高揚し、5時には完全覚醒していました。湾外へ出たところで1タックしたら賀田湾口までクローズホールド一本でした。追い波のためスプレーも無く平均7ノットの快適セーリングを満喫する事が出来ました。前日とは打って変わって東紀州の海岸線もすべて眺望でき、奇岩、景勝地をセーリングしながら味わうといった贅沢をはじめて経験しました。着岸は初心者にとっては緊張するところですが勝美屋さんにお願いして梶賀漁港の入ってすぐの左岸に横付けしてあった船に横付けさせてもらい事無きを得ました。 賀田周辺はゴールデンウィーク中にはグレ釣のメッカとなるようで勝美屋さんはとっても忙しくされていました。また、今年は定置網によるブリ漁が大量とのことで翌朝もブリの仕分けで漁港は活気づいていました。実際、活気のある朝の漁港ほど魅力的で絵になる職場はあんまり思いつきません。いろいろな人のクルージング日記を読んでいると朝から漁港の市場をのぞくことを日課としている人を見かける事がありますが、その理由を理解できたような気がしました。市場で地元のおばちゃんが背中の籠にブリ一本頭から入れ、その尻尾で頭をたたかれながらも家へと急ぐ姿もなんとも御愛嬌でした。 5月4日、順風満帆。 この日も晴天でリーチングで目的地一直線。4時間ほどのセーリングで錦へと到着。ここも岸壁に横付けで着岸をこなしました。ただし今回は場所が悪かった。漁師さんが指示してくれた岸壁は大敷け網の干し場でいわゆる独特な匂いで充満していて風向きによって耐えられない匂いに包まれる事となりました。こんなところに泊めていては出会いなんて期待できないと思いつつも他にあいている場所も見つけられなかったので仕方なく、隣接するトロピカルセンターでトレーニング後シャワーを浴びトロピカルセンターで夕食を取りました。 5月5日、油断大敵。 はじめてのクルージング5日間も無事に過ぎ、五ヶ所へ帰港しました。各地の美しい海岸線や、人情味あふれる漁港を訪れ、数々の感動を得ての帰港でしたが、慣れ親しんだ五ヶ所湾内に入るとホットするとともにその美しさに改めて感激しました。今回、大きな事故も無く帰港できたと安堵するのもつかの間ポンツーンに着岸しようとしたところ風に流されて、危うく隣の船にぶつかるところでした。いろいろな記事で事故は最後に起こっていると書かれていますがまさにこのことかと身をもって知りました。 今回、クルージングを振り返って見ましたが皆様のクルージング記録に比べて圧倒的に情報量が少ないことに気づきました。出航から着岸までで精一杯で寄港したとたんビール漬になってしまい、周囲を散策する余裕などなかったのです。次回はもう少し余裕を持ってクルージングしたいと懲りずに次の計画を考えている今日この頃です。
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